リハビリの前にこのページを印刷する - リハビリの前に

徳島病院のパーキンソン病専門リハビリテーションは平成21年春にスタートして以来、おかげさまで多くの患者様にご好評を頂いております、 徳島病院のパーキンソン病センターでは、実際にリハビリテーションを進める前に、ぜひ御理解いただきたいことがあります。といいますのも、 パーキンソン病センターにおけるリハビリテーションはこれまでの一般的なリハビリとは全く別の考え方で取り組む必要があります。ですから、 その考え方をよくご理解いただけない場合には、十分な効果が望めません。これまでは徳島病院のパーキンソン病外来を受診された際に、 できるだけ時間をとってご説明しておりましたが、なかには十分な時間をおとりすることができない場合がありますことから、それを以下にまとめてみました。

パーキンソン病について

パーキンソン病は運動のスムーズな遂行・バランスが障害され、

    “手足がふるえる”(振戦)
    “筋肉が固くなる”(固縮)
    “動作が緩慢になる”(無動)

などの症状が徐々にあらわれて進行し、最終的には寝たきりになります。

原因の詳細は不明ですが、中脳の黒質の神経細胞が変性脱落し、 ドーパミンという運動機能に大変重要な神経伝達物質が減少する(正常の四分の一以下)と症状が現れると言われています。

パーキンソン病の治療の限界

パーキンソン病では、不足したドーパミンの作用を補填するために様々な治療薬や外科的治療法がありますが、 基本的には対症療法であり、神経細胞の変性が進行することを食い止めるような治療法は確立されていません。 このため、パーキンソン病のお薬は、はじめはごく少量でよく効きますが、次第に効果が悪くなり、 服用量を増やすことになります。しかしそれでも十分な効果が出なくなったり、色々な副作用に悩まされることになります。 これがお薬や外科的治療だけに頼った場合の治療の限界ともいえるものです。

リハビリテーションとトレーニングの違い

リハビリテーションはラテン語で、re(再び)+ habilis(適した)、すなわち「再び本来の健常な状態に戻ること」を指します。 一方、トレーニングはラテン語で、「ひっぱる」より、「訓練する・教育すること」を意味します。図に表すと下のようになります。 すなわちリハビリは元の状態になれば目標は達成されるのに対し、トレーニングは人並み以上の能力を得るため、 必死にがんばるような運動のことが多いようです。

どうして、このようなことをご説明するかといいますと、徳島病院でパーキンソン病の専門リハビリテーションに入院された中で、 「トレーニング」のようなお気持ちで、一生懸命に、文字通り一分一秒を惜しまれるように、訓練される方がいらっしゃいます。 しかし、これでは逆効果になります。たとえば、運動選手が大会に出場する前に行うトレーニングは、必死の思いでされるもので、 精神的には強いストレスを受けるものです。パーキンソン病の方の場合は、ストレスを解消する方向でリハビリを行う必要がありますが、 パーキンソン病のリハビリでは、たとえば朝、小高い丘のようなところに登って、 軽く一汗かいて、足元に広がる景色をながめるような爽快感を感じることが最も大切であると考えています。

大切なのは「リハビリの方法」ではありません

当パーキンソン病センターでは様々な方法でリハビリを行っています。その中には、他の施設ではあまり見られないようなユニークなものもあり、 報道機関からも取材をうけています(詳しくは報道から)。 これらは、徳島病院のパーキンソン病センターのスタッフ全員が、従来の「おきまり」の方法にはとらわれずに、 パーキンソン病の方に本当に有効なリハビリ・メニューは何だろうかと、時間をかけて検討を重ねた結果、生み出されたものです。 しかしながら、私たちは「リハビリの方法」が最も大切であるとは考えていません。言い換えると、「パーキンソン病の方には、 これをすると魔法のように症状が良くなる」といった方法はありません。大切なものは、リハビリスタッフの接し方であり、 リハビリをする時の環境的なものです。たとえば、評判の学習塾で、良い先生が教室に生徒を集めて授業をすると、 素晴らしく良く分かるのに対して、同じ教材をもらった子供が自宅で学習しようとすると全く理解できない、といった状況と似ています。 つまり、私たちは、リハビリは具体的なメニュー(方法)、スタッフの接し方、入院をしてリハビリをすることに関した環境の全てについて、 甲乙をつけ難いくらい大切であると思っています。また、現在の私たちのスタイルがベストであるわけではなく、 更に改善点を見つけていく必要があると考えています。